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第1部 一章【財前姉妹】その5 第伍話 オリジナル戦術書

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-04-10 10:00:00

52.

第伍話 オリジナル戦術書

 その日、バイトから帰ってきたカオリは家に誰もいないことを確認するとキーホルダーをツンとつついた。

「ねえwoman」

《なんですか?》

「マナミが伸び悩んでる感じがするんだけど、何かアドバイスできないかな」

《ラシャの付喪神様は無言みたいですからね。ちょっと間違ってるとお知らせしてくれるだけで基本的にはマナミさん自身に任せてますよね》

「何か効果的な練習メニューとかないの?」

《そうですね、私なら……》

「私なら?」

《自分オリジナルの戦術書を作ります》

「自分で?! そんなこと出来ないよ!! 未熟も未熟。私たちはまだ素人みたいなもんなのに!」

《何言ってるんですかカオリ。あなたもマナミさんも今はもう競技団体に所属している、まごうことなきプロ雀士なんですよ。忘れたんですか?》

「そ、それはそうだけどぉー」

《やってみればカオリには出来るはずです。カオリは文章を書くのは得意じゃないですか。マナミさんにも書き方のコツを教えながら2人で作ってみたらいいんです。やり始めればきっと楽しいですよ。日記だってカオリは楽しそうによく書いてるじゃないですか》

「例えばどんなことから書いたらいいかな」

《そ……

(あ、消えた)

 カオリは再びキーホルダーをツンとつつく。

「で、例えばどんなことから書いたらいい?」

《そう言うのはまず自分で考えるから意味があるんですよ、カオリ。でも、強いて言うならまずは基礎からじゃないですか? 私ならスタートは基礎から。確実で、それでいて出来ていない人もたくさん居そうな。そんな自分の中で一番気をつけてる『構え』から入るかもしれませんね》

(ふむ、なるほど)

「ありがとう、woman。マナミと一緒にちょっと考えてみる!」

《これでマナミさんが一皮剥けるといいです

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